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9をめぐる

2024.05.18 Sat 「 [PR]
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2013.06.04 Tue 「 オニオンスライスイクリプス習作
赤いネットに入った中から無造作に一つ玉ねぎを取りだした。
よく研いだ包丁を使ってあたまと根っこを切り落とす。
半分に割って、おしりの部分に三角形の切り込みを入れ、一枚一枚がバラけやすいようにした。
茶色い表皮をゴミ箱の上で剥いていく。
断面に残った表皮のかすを水で洗い流した。
半分にした玉ねぎ、そのうちひとつをまな板の上に乗せ、僕は呟く。
「ふとんがふっとんだ」
そうして、つやつやと真珠みたいに光っているそれをちょん、と指でつついた。
ぱらり、と何の前触れもなく玉ねぎがみじん切りになって小さく山をつくる。
これが僕の持っているちから。
『たべものをみじん切りにする能力』
使う時に寒いギャグを言う必要があるのが難点といえば難点。
でも別に他の人の前で披露することもないし別にどうでもいいことだった。
他にこういう能力がある人間に出会ったことはないけれど、多分いるんだろう。
なんの変哲もない僕みたいな人間ですら持っているんだし。
きっともっと使いどころもあってカッコいい能力だってあるはずだ。
「……やっぱつまんないなコレ」
呟いて、僕はもう半分の玉ねぎもまな板に乗せる。
包丁も持つ。
最初に落としたあたまと根っこの断面と垂直な方向に端から切り込みを入れていく。
決してスライスしてはいけない。
スッ
とん
スッ
とん
一定のリズムを刻みながら僕は玉ねぎを刻んでいく。
「うん、よし」
まるで歯の詰まった櫛みたいな見た目になったそれを90度回転させる。
そうしてまた端から等間隔に、今度は完全にスライスするように、包丁を入れていく。
少し目の粗い玉ねぎのみじん切りの山が出来た。
僕はさっき能力で作った山と合わせてさらに細かくみじん切りにしていく。
左手で刃の先を押さえ、右手で柄を上下させる。
裁断機の要領だ。
ときどきまな板の上に散らばった欠片を集め、執拗に刃の上下を繰り返す。
だんだんと玉ねぎがペースト状に水気を帯びてきた。
もはや原形をとどめていない。
「ふう」
僕はそれを包丁の腹にまとめて乗せる。
「たのしかった」
出来上がった玉ねぎペーストはゴミ箱の餌にした。



 * * * *


前半部分改作
趣味:みじん切り
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2013.06.03 Mon 「 オニオン・スライス・ヒューマン・ムーン習作
たまねぎ。
てっぺんと根っこを包丁で切り落とし、ゴミ箱の上で茶色の表皮を剥く。
細かく千切れた茶色の表皮を水で軽く洗い流した後、それをまな板の上に乗せた。
「ふとんがふっとんだ」
ぼそっと呟いてから人差し指でたまねぎをつつく。
一瞬ののち、ぱらり、と糸が解ける様にたまねぎがみじん切りになった。
これがぼくのろっこん。
『食べ物をみじん切りにする能力』を備えている。
特に名前は付けていない。
発動条件は寒いギャグを言うこと。
それともうひとつ。
「うああぁかゆいぃ」
ぼくはぼりぼりと首筋をかきむしる。
もうひとつの条件は、ろっこん発動後に体の一ヵ所が死ぬほどかゆくなることだった。
まるでそこを流れるぼくの血液そのものがかゆみを帯びているみたいな激烈なかゆみ。
掻いても掻いてもおさまらない痛痒がぼくを苦しめるのだった。

新月の夜。
まっくらで、街灯がスポットライトみたいに見える夜。
ぼくは町をふらついていた。
耳にはイヤホン。
コードの先は携帯ミュージックプレイヤ。
ギンギンに歪んだベースがぼくの鼓膜を突き破り脳味噌を掻き回している。
今夜ぼくは新境地に至るはずだ。
大丈夫。
ぼくならだいじょうぶ。
何度も実験はしてきたんだ。
待ち合わせ場所に到着した。
彼女は先に来て待っていた。
紺色のワンピース、闇に融けてしまいそうな。
一緒にぼくを手伝ってくれるその彼女だ。
「おそいよ」
「ごめん、マッターホルン?」
そう言って、ぼくは彼女の胸を人差し指で突いた。


 * * * 

即興二次小説
↑ここで書いたもの。
制限時間15分
お題:かゆくなる血
ジャンル:らっかみ(PBW)

自己紹介だけじゃつまらんのでとりあえず置いときましょう。
アゥフヴィイダァゼエン
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三三三
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